顔を欠いた身体は、個人を示す記号ではない。それは現実空間に開いたひとつの「面」であり、匿名の次元として立ち現れる。

 本シリーズでは女性の身体の部分のみを切り取り、あえて顔を排除することで物語・感情・人格と言った情報を脱色している。残されたのは、身体でありながら「人物」ではない。空間的な表面=皮膚である。

 モノクロームは色彩による意味づけを拒否し、身体を文化や時代性から解放する。光と影のみで構成されたその表面は、触れられることのない異次元として現実の中に静かに挿入される。

 ここに写されているのは、誰かの身体ではない。それは現実空間に突如として出現した、顔を持たない次元の痕跡である。